第26回日本小児リウマチ学会総会・学術集会の会頭を拝命し、大変光栄に存じております。このような機会を与えてくださいました、会員の皆様に感謝申し上げます。
本学会も研究会のときから数えて、すでに四半世紀を過ぎたことになります。新たな四半世紀の第1歩を踏み出すにあたり、まずすべきことはもう一度原点に立ち返って、小児リウマチ性疾患と本学会について考える事ではないかと考えました。そこで、今回の学会の大きなテーマを「原点への回帰」と致しました。
90年代の終わりにリウマチの新たな治療薬として生物学的製剤が登場して以来、その劇的な効果からこれらの薬の使い方が成人領域でも小児領域でも学会の話題の中心となりました。どのような患者に、どのように使うのが最も良いかの検討がなされ、ガイドラインなども整備されました。その中で本学会の果たした役割は非常に大きいと考えております。その一方で、ふと振り返れば、疾患の病因・病態の解明はいまひとつ進んでいないことに気づかされます。そこで今回は、疾患の「原点」に立ち返って、自己免疫あるいは自己炎症のメカニズムを考えたいと思います。
私は第1回の研究会からこの会に参加しておりますが、さほど広くない某製薬会社のホールに集まって、週末の一日、朝から晩まで、時間を忘れて激しい討論をしたことを昨日のことの様に思い出します。こちらの原点にも戻る時間が作れるよう、プログラムの検討を重ねています。
また、この25年で患者さんおよびそのご家族と医療者の関係も、様変わりしてきたと思います。そこで、今回の学会のマスコットキャラクターの形を借りて、あるべき姿を考えました。キャラクターのデザインは、千葉大学大学院をご卒業されたイラストレーターの伊藤香奈さんにお願いしました。真ん中のレッサーパンダ(学名Ailurus fulgens:「光輝くネコ」という意味を持ちます)のこども、光太(こうた)君は、患者さんの象徴です。千葉市動物公園の人気者、「立つ」レッサーパンダ、風太君がモデルです。彼の着ているTシャツの花は大賀ハスです。大賀ハスは縄文時代の遺跡から発見され、3000年の眠りから覚めてしっかりと花を咲かせました。また、「蓮は泥から出でて泥に染まらず」と謂われます。患者さんには大賀ハスのような強さを持って、自分の足でしっかりと立って光り輝く未来を見つめて欲しい、との願いを込めました。レッサーパンダのお母さんは、患者さんのご家族、ヒツジのお医者さんは医療者を現しています。患者さんの自立を促すように、お母さんとお医者さんの手は、患者さんから離れています。でも患者さんが必要なときはいつでも手をつなげるように、患者さんにむかってさしのべられています。そして、彼らも患者さんと同じ未来を見ています。慢性疾患である小児のリウマチ性疾患の医療とは、このように形作られるのではないでしょうか。
会期は10月末ですが、千葉は温暖な気候の土地です。キャラクターの背景には、千葉の観光名所が描かれています。お時間の余裕のある方は、房総半島にも足をお運び下さい。
先生方のご参加を心からお待ちしております。
第26回日本小児リウマチ学会総会・学術集会会頭
千葉県こども病院アレルギー・膠原病科
冨板美奈子